沈黙協定
突然。
突然、『それ』が自分の上に落ちてきた。
逆立った銀の髪、真っ直ぐ見つめる紅の眼、日焼けを知らない白い肌。
開いた利き手で封炎剣を握ろうとしたその肩に頭突き。
舌打ちをして殴り付け
止めた拳にあった煙草がまた静かに紫煙を上昇させていく。
『寝てる・・・?』
口元に当てた手の隙間から、まるで犬のようにくうくうと小さな声と共に一定のテンポで肩を上下させ繰り返される呼吸。落したままの瞼は開かない。
演技では出せない、眠った人間独特のぐったりとした肉の重さ。
少し考えて、煙草を強く、深く吸い込んだ。
それをゆっくり上へと吐き出しながら、“落ちてきた”場所を探す。
吐き切って、別にどうでもいいかと、視線をチップへと戻す。
やはり完全に眠っている。
面倒だと思いつつ、今起こしても余計邪魔。
封炎剣へ添えていた手を、そっとチップの背に回す。
起きる気配がない事を確認して、腕の重さを掛けていく。
もう一吸いすると、ぐしぐしと土に摩り付け煙草の火を消す。
どうせ起きたら理由はどうであれ、喧嘩を振っかけてくるんだ。叩きのめした後、話をすればいい。
勝ったら勝ったで文句を言う、困ったガキ。
頭突きを食らわすぐらいでしか、こんなに近くに顔を寄せる事はなかったが、それなりに美形ではないか。
『・・・こんな風に黙ってりゃあ、もう少し・・・』
ため息のように煙を吐き出す。それがかからないように横を向いたのは、ほんの少し残した気遣い。
「まあ・・・いいか・・・」
まるで自分に言い聞かすか確認するように呟く。
これ以上探す手間が省けたのだ。無碍に起こす必要もない。このまま待ていればいい。
それに・・・
偶然でもこんな風に縋られるのも、たまには・・・・。
何であっただろう?
自分のものでない人の匂い。無理矢理開けた掠れた目で見たのはソル・バットガイの顔。
目を閉じている。寝ているのだろうか?
3日ずっと山の中を歩き続けて、ギアって馬鹿じゃねーの?と思っていたが、やっと寝たか。
また、脳の中が穴に引き込まれる感覚。抗えず瞼を閉じた。
擦り寄ってから何かが違うと思ったがそれもすぐ、一緒に眠りの中へ消えていった。
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チプを探してたソルさん。ソルさんに見付からないようにずっと尾行してたチプ。折り合っているようで噛み合ってない感を。探してた理由はハントの手伝いさせようと。この後を粗方は考えてるけど続きどうしようか…