姦計
階段を3階分上り、廊下も冷静を装って。
部屋に入り、慎重に入り口へ鍵を掛け。
一気に走って柔らかな所へダイブ。
アクセルはグリグリと久しいベッドの感触に幸せを噛み締める。
「ああ〜ん・・・やっぱ、コインと切手はアンパイねえぇ〜」
どうやら、“自分”だけが跳ぶ事はないが、“跳ばない”範囲が分かってきた。
服や武器は一緒に付いてくる。
でも座っていた椅子は付いてこない。
持っていたスプーン、皿は来た。
テーブルに置いていたフォーク、グラスは来ない。
一緒に跳ぶ物に接触している、尚且つ全体が範囲内にいる事。
まあ、例外はあるので、とりあえずは自分自身の安否の為、気を付けている。
今日だって、寝てる間に跳んだ事を考慮して宿代も前払いして、時間指定して部屋を片してもらう手筈をした。
まあ、そうなるとおのずと身一つになる。
人間食わなきゃ死ぬ訳で。
ソルの旦那見習ってバウンティハンターしてみたが、引き渡す前に跳ぶと意味がない。
それで気付いた資金調達がポケットに入る“コイン”や“切手”。
言葉さえ通じればどこの時代でも収集家は居るらしく、それなりの収入になる。またその時代の一枚を持っているだけで“次”に助かる。
跳ぶ事を利用した輸入業。
それなりに歴史変えちゃあいけないから配慮しながらコソコソと。
今日は日本の18という切手が良い値で売れ、懐が温かい。
コッコッ
いい幸福感の中、聞こえた音。鳥さんですか?
無論無視。
カッカッ
もうナンよ?俺様一眠りしてお姉えさんとおさ
「ふぃゆやわ!!」
音の方を見て視界に入ってきた生首に気付いて、体ごと跳ねて喉が凄い音を出した。
再びそれが、ガラスを叩き、音をさせる。
心臓のドキドキはそのまま、近付くとそれは消えた。
外開きの窓を開けると再び出てきた。
「よう。」
どうなってるんだろ?わかんない。
視点は同じで、チップが逆さで片手を出して挨拶。
習って同じくしてみる。
「ナニ?」
「入っていいか?」
アクセルが正面からズレた事で容認と取って体を半捻りしてふわりと窓際に舞い降りてきた。
じっと見つめられアクセルは“どれ”だろうと思い巡らす。
それを困惑と取って、チップは意地悪そうに笑う。
「・・・・してくれんだろ?」
「へ?」
「“いつ”から来たか知らないけど、俺にとちゃあ、今が次なんだ。」
「あうわー」
どうやら未来の自分が過去の今の前に約束かなんかしちゃったみたい?
こんな訳の分からない時間軸の説明を最初っからしなくてもいいチップがそれを分かって来たのだ。なにか相当の借りを作ったか迷惑をかけたか・・・
「・・・わかった。理由は聞かない。」
俺様にとっては未来の話。知っちゃいけない。
「でも、俺今さっき跳んで来たばっかりだから、ちょっと休ませて。」
「じゃあ、丁度いいじゃないか。」
「ふへ?どうゆー事?」
どうゆー事?
頭でグルグルと色んなものが回る。
本当に何をどうやったらそうなっちゃう訳?
逃げたい気持ちもあるがすぐ捕まりそうだし、誤魔化しても多分どうにもなんない。無かった事にしてくれと言ったらブチ切れそうだ。
無碍に手放すにも惜しい感じがする。だからって甲斐性もなくしちゃっていいの?耳が音を余す事無く聞いているのも事実。
その音が止まる。時は刻々と。
どうする?
「・・・なにしてんだよ?」
一室から出てきたチップは、髪を吹きつつバスローブを着て・・・俺といえばバスタオル一枚。
・・・・まあ、そういう事だ。
何をどうやったらこんな約束取り付けたのよ?未来の俺?
「そんなに疲れてたのか?」
髪も拭かず、腰掛けていたアクセルの後ろ、ベッドに上がると後ろから長い髪をそれなりに優しい手つきで拭いてくれる。
「・・・女の方がいいのは分かるけど、今は俺・・・」
無理強いではない。
ある意味合意。
確かにお姉さんも好きだけど。
『うん。折角ココまで来たんだし、据え膳。イイ事しちゃいましょう!』
太ももを叩いた音に、クスクスと後ろから笑う声。するりと回ってきた白い手。肩へ柔らかなキス。
何より何より、こんなに積極的で大人しいチップを手放すのは惜しい。
夜見るチップも艶やかだが、まだ高い陽の光の中、白い肌は一段と白さを増し、シーツに一体となっているようだ。
そんな絹肌へ口付けを落とし、舌を這わす。
小さな声と共に少しづつ頬が赤らむ。
そんな頬をイイ子イイ子すると、薄く目を開けてじっと見つめる。
それに笑って答え、キスしてあげる。
まだ湿った髪を撫ぜて深く、深く。
離れると大きく息を吸って、もう一度、何度でも。
ここで娼婦なら男の体に手を回したりするが、チップは軽く握った手を居心地悪そうに場所を探してコソコソ動かしている。
本人分かってないだろうケド、それがなんとも初々しく可愛く見える。
まあ、慣れてちゃ、ちょっと嫉妬する。
そんな手を優しく指を絡ませて、逃げ場をなくして、“知っている”イイ所を漁る。
声は控えめに抑えているけど、感じる所を少し強くすえばキュッと指が締まり、露骨にポイントを教えてくれる。
真っ平らの胸にそれなりの筋肉のある体はどう見ても男の体。
なのに欲情してる自分が形となって現れる。
「・・・・顔・・・見えた方がいい?」
潤った瞳が薄く開き、じっと見つめる。
少し首をかしげて答えを促し、待ってあげる。
間をおいて、意図を理解し、恥ずかしそうに小さく笑い頷く。
OKと落ちている前髪をかき上げて、額へキス。
名残惜しい平を離すと、ゆっくりと足を誘導。
ダンスを踊るように優雅に大きく上げられた、あのスピードを出すとは思えない細い足。
筋肉の筋にそって指を流すと小刻みに震える。
誘ったのは、求めたのは、急かしたのはチップだというのに。
この時が一番心配になる。
身を委ねるという事がこの子にとっては一番怖い事なのだと気付いたのはいつだろう?
「・・・ちゃんと優しくしてあげる・・・」
こんな一言じゃ何も拭えないのは知っている。
でも、想いはもうそれどころじゃない。
綺麗な口元が歪み、ギリリと食いしばった歯が音を鳴らす。
その不安を痛みを消すように、最奥を目指す。
「あ・・・あ・・・」
仰け反った首元に、よく出来ましたのご褒美にキスを降らせる。
後はもう大丈夫。
子猫のように優しく撫ぜて、触れて、愛情をあげれば、ちゃんと鳴いてくれる。
小さな爪が肌を掻くけど、それは嫌だからじゃない。
遊んで欲しいだけ・・・
なら遊んであげる。
たっぷりと。
長い髪が上下するチップの胸に覆いかぶさる。
体重の半分を支えていた腕で起き上がろうとするが力が入らない。
重いだろうケド、そのまま繋がったまま余韻を味あわせてもらう。
当分、色街には足が向かない気がする。前もそうだったし・・・
顔を上げると、口元に手を当てたチップも少し震えて“良さ”を味わっているようだった。
「だいじょうぶ?」
頭を撫ぜると、声もなくコクコクと頷く。
すっかり日も暮れて、窓からの淡い街燈の光だけが天井にある。
明かりをつけるより、チップから離れたくなくて・・・
反射光を纏って陰影のはっきり出た体を労わって撫ぜる。
本来、そういうふうには出来ていない。
辛かっただろうけど、それ以上をしてあげれたと思う。
耳元に囁いてから。
「んん・・・・ん・・・ああぁ・・・んぅっ」
はじめとは違い、まるでまだ足りないと言いたげに甘い声を、滑らかに引き抜れるそれで歌う。
これ以上は流石に・・・・無視するように高まりを抑えて。
引きずる様に体を進まし、頭を撫ぜるとまた頷く。
言葉で表せないそれを具現化させるように。
口元の手を優しく包み避けると、触れるだけのキス。
「約束・・・返せた?」
潤んだ瞳でじっと自分の目を見た後、瞼を閉じるのに合わせて小さな返事。
良かったと、いつもの陽気な笑いでなく、穏やかな微笑みをアクセルは返す。
それにチップも少し照れたように、困ったように笑う。
「疲れたでしょ・・・このまま泊まっていきな。」
自分が疲れたように(いや結構疲れているのは事実)ドサリとチップ横に落ちると、おいでと手を広げる。
チップは抵抗する事無く、その腕の中に入り、胸へと擦り寄る。それをアクセルは離れないよう深く抱きしめる。
柔らかな猫毛へ顔を埋め、甘くも思えるその香りをいっぱいにニ吸い込む。
『あ・・・食事・・・・させてあげないと・・・』
落ちていく意識の中、“前”のお返しを思い出した。
幸福感と満足感と疲労感と安心感と・・・
二つの寝息はすぐに重なりだした。
綺麗な月夜。
いつもの跳躍は出来ず、路地を挟んだ程度の屋根づたいに進む。
半分隠しているがきっと顔はまだ熱を持ち赤いだろう。
起きて、隣に俺が居なかったらアクセルはきっと落胆するケド、これ以上は居ちゃない。
嘘がバレてしまう・・・
いきなり、範囲にアクセルの気配が出てきた。
きっと跳んできたのだろう。
それを目指し見付けた時、既にホテルのロビーに居た。
だから・・・カマをかけてみた。
約束なんてない。
ただ・・・
思い出し、また一つ熱が上がる。
『して・・・濃厚なの・・・』
唯一つの事実。
その為の嘘。
だから、またアクセルが跳ぶまで俺は逃げないといけない。
素直なのだか素直でないんだか。
満たされた心に自傷の微笑を送った。
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ドになったんでしょうか?する事は決まったので、その為にベッドが欲しかった。の結果。お題貰った落語家状態。…相変わらず…
個人的自分的に?ココのチプが好いてるのはポチョさんとアクセルが上位。でも、アク、女好きだったり恋人持ちだったりで手を出すイメージがない。だから誘い受だけど、チプは素直じゃない。天邪鬼。でも、ポチョさん、アクは優しくて我儘し放題。上位維持な感じ?髪を縛ったらジョニーとカブる、セリフ書いたら難波変換で腹立つ、変えたらアクじゃない、文でも絵でもとってもギリギリするwww