求めるモノ
猫のように首筋を取られ振り起こされ、続きも思い出すことも出来なかった。
『お題:優しいソル』
小さな紙を見詰めて、ゆっくりと背後を見る。
その名の男と視線が合って、もう一度、紙を見るフリをする。
視界の中に出口や壁の途切れ目はない。アレの後ろにあるかもしれないが、空気の流れがない。密閉に近い。
どうやって
「おい」
やはり思った通りの声。静かに振り向く。
上げられた手が手招きする。
対処を迷い泳がした目で逃げ場を探るが見付からない。
どうする?
どうしたらいい?
コンコンとテーブルを爪で叩く音。
催促をされている。
落胆に近い吐息をしてから、その小さな紙に眼を落したまま、決して視線が合わぬ様に、用意された正面の椅子へと座る。
腕にはブレードがない。
それどころか、隠し武器の手裏剣もクナイも、鉄アレイも、ちくわさえもない。
この男と素手で殴り合い?
出来れば鎖骨は折りたくない。一撃必殺を当てるのは無理だろう。
腕を犠牲に、腹部へ蹴りを
「・・・頑張ってるな・・・」
「ぁん?」
やっと顔を上げ、ソレの目の前にも同じ文字が書いてある紙が置かれてる事を知る。
『優しい』をしてくれるのか?
この激炎の男が?
恐る恐る顔を・・・・
見た事もない、穏やかな微笑み。
「・・・・師匠が・・・・」
「ん?」
問い返す声もトクりと心揺らがせる柔らかさで
「俺は・・・馬鹿だから・・・・・答えが見付かるまで・・・・走り続けて・・・・続けて・・・・答えを見つけろって・・・」
「・・・・・俺もだ。」
思いもかけない言葉に顔を見る。
いつも場を見据える目を閉じて、口元はそのままで。
「こんなに・・・探しても・・・・・見付からない。」
「何を?」
もっと、歯が見えるぐらい笑った。
「お前より5倍以上生きてても分からん。だから・・・続ける。」
「・・・・俺が・・・・大統領になったら・・・・何か出来るか?」
こんなに瞳を見た事があっただろうか?
「ああ・・・・頼みに行く。だから
「チップ!チップ!!また夜更かししたのか!?」
既定の時間に起きるのが苦手な部下の部屋に入ってくると上司が怒号が上げる。
毛布に埋まっていた顔を上げると、簡単に剥かれて冷たい空気に肌が晒される。
「ああ・・・ああああ・・・・・なんか夢見てたのに・・・・」
「時間ギリギリだ。用意しろ!」
猫のように首筋を取られ振り起こされ、続きも、思い出すことも出来なかった。
『良い夢だった気がする』でも、ほんの少し切ない嘆きが・・・・
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まだやってた魔王でない〜企画第三弾。夢オチだけど一応成功?目的を持って突き進むチプとあの男が何したいか、何をするのか分からず答えを探し続けてるソルさん。共に追求者?は後付け。失敗の反省を踏まえ戒めにお題書いてから作り出したらこんなんになった。反省も成長も一切ないいつもどおりの行き当たりバッタリ。