証-アカシ-
その火炎は見た目以上に熱くはない。『衝撃波』に体は痛むが構わず突っ込む。
そう。一番厄介なのはあの拳。
体全体を打ち付けるポチョムキンの重い拳とは違う、鋭い一撃。
それを受け止めながら、返しに連打を入れる。
一面を覆う火炎。
何度も受けた事がある、炎を盾に突っ込んでくる技。
対処法はある。
刃を前に構えると自分も炎に突っ込む。
髪ぐらい構わない。
服もどうでもいい。
「!!」
炎の中から伸びてきた腕。
違う。気付いた時にはもう遅い。力強い平が、がっしりと髪を掴んだ。
瞬間の鍔迫り合いに負けた後、脳を強烈に揺らす衝撃。
その勢いで離れた手から無様に落ちると、石床で数度頭が跳ねた。
焦点が合わない。激しく上下する視界に、気持ち悪さを覚えて・・・・
・・・・・・・ブラックアウト・・・
疲れ様子で帰ってきたチップは、片手に制服を握り締め、壁を伝って歩いてくる。
鎖帷子だけ着込んだ上半身の所々が赤黒ずんでる。
また、何かをやって大統領に打ち倒されたのか思ったが、額の、まるで机の角でぶつけた様に、真っ直ぐな痣と腫れに違うと気付く。
「寝ろ。氷を用意してやるから。」
枯れた声で返事をすると、痛む体をゆっくりとベッドに預け、疲労のため息。
ポチョムキンは、後頭部にも腫れがある事を知り、氷枕も用意した。
額に置いた袋は自分で支えさせて、痣へチップ自身が作っていた薬を塗っていく。
自分も知っている、毛が燃えた独特の焦げた匂い。
チップをここまで出来るのはただ一人。
「ソル・バットガイか・・・?」
「・・・強く・・・なったと思ったのにな・・・・」
「なったのではないか?」
トントンと腕を叩かれた。いや、肌に触れてない?
まだクラクラする視界で、そこを見る。
ベルト・・・?
「それなりの敬意ではないか?」
奴のものだ。
アイツがわざわざ付けて行ったのだ。
本当に敬意か?
悪意だろ?
「・・・悪ぃ、水くれ。」
体を起こし、冷たい水を一気に飲む。
気持ち悪さは大分と消えていた。
視界も、もう少しすればマシになるだろう。
「よし・・・」
「少し待て。」
額に出血がないことを確認すると、袋を取り出す。
怪訝な顔をするチップに薬ではないと説明し、髪の毛を上げると額に張る。
「ぉ・・・?・・・?」
「簡易的に額を冷やすものだ。しばらく付けておけ。剥がれてきたら取っても良いが。」
見透かされているようだ。それでいて止めないのは流石だ。
もしもの時は回収もしてくれるだろう。
いつもの軽装になると、フッと気合を入れなおす。
「じゃあ、夜這かけてくる。」
「夜襲と言ってくれ。」
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チップの額に冷えピタを張ろうと思って…どうやったら大人しく張られてるかと。の、結果。喧嘩する時は汚れると怒られるのでちゃんと制服脱ぐ良い子。でも大統領にも喧嘩売る困った子。