劫火




自分はウサギ。

猛獣に喰われる。命を弄ばれた哀れな弱者。



ゆっくりと下ろされた指は“灸”の様な熱さ。
そっと下がっていく毎に、それは弾けながら肌を焼いていく。

痕(あと)追う舌はそんな肉を切り裂いた。
内臓まで届きそうな程の深い傷。

だだ、残る赤・・・

それを感じる事自体がコイツの不幸か幸福かは関係ない。



“バラす”歓喜。
“バラされる”断末魔。



ソルはチップを。
徹底的に。
陰湿に思えるほど。

壊した。



満足気に、自分の腕だけに体重が掛かる、自分が赤に染めた体を見た。
まだ真っ白な首筋に寄る。




頭突きが来た。
涙を描きながらも強い眼光。

破壊出来ない“闘争心”。
苛立ったように歯がギリリと鳴り、冷酷な眼差しで、ソルはその頬へ平手を打つ。
そして足の間の腹の中に、冒涜の楔を打ち込んだ。


開いた事のない傷穴へ、燃え滾る楔で何度も何度も、何度でも。
罪の業火は内臓を裂き、焼いた。
最後に高温の鉛まで流し込み、内から。


ピクリとも動かなくなった体。失う事は至福だ。
だが、きっと。コイツともう一度、眼が合った時こそが一番の快感。






無論。


と、でも言うべきか。




比喩だ。
それでも真実。


その白い、無駄に真っ白なチップの肌には、何一つ、傷も、流血もない。
ソルは舌を這わすついでに、唇を強く寄せただけ。
触れただけだ。

その色素の薄い、細身の体に。



それだけ。

戦いに身を置いた者にしては場違いな、純白の肌に強い色の『花』だけ。





しかしながら、彼は年の功か、匠の業か、自分の『半分』もない、その肉体の弱点のすべてを“触れた”。

“傷(あと)”を付けたい。

熱さを持って、殺す様に。
葬花を贈る様に。


肌だけでも良かった。



頭骨と頭骨がぶつかる音。
涙を浮かべつつ睨み付けた鋭い眼差し。




せめてもの情けで彼は、抵抗を殺させ、自分の武器にも等しい火炎の熱さを容赦なく全部ブチ込み、内臓を掻き出す勢いで。
紅(あか)い高温の鉄棒で体内に幾度も幾度も。
粘膜の皮膚を剥ぎ取り、最後は脳まで達しそうな勢いで吐き出し、奥の奥まで陵辱した。

何度目も。



いや、まだ・・・







動けない体。
働かない脳味噌。

半日以上乱暴に喰われながら、それでも死なない。
死ねなかった。

狂わなかったのも、自分でも不思議と思うそれは、「意地」か「信念」か。

「不幸」か?







未だ自分に覆いかぶさり、内臓を貪り続けるソルの長めな髪に噛み付き、ブチブチと引き抜いた。
さすがに上げたソルのツラに、蔑む様に、苦痛に耐えた血を吐きかける。

「ザレんな、rapist!殺す気ならもっと、本気でヤれよ。殺し合いだろ?情なんかいらねェ。全部切り裂け、焼き尽くせ。
腸(はら)から爆ぜさせろよ!」
苦しさの中、甘い吐息での強気な暴言。




ソルは、無碍(むげ)にその白い肌の内から“お仕置”を抜くと、拘束していた疲労の体を手放した。
支えのない肉はそのまま平面に落ち、無骨に地を打つ鈍い音が聞こえた。

「こんな、胸糞の悪いマズい肉、もういるかよ。」



酷い言い様。

開いたままの穴には彼が放った侮辱の何物でもないものが、尋常になくトロトロと流れ出ている。



それでも。
全裸のクセに。起きる事も出来ないクセに。
チップの鋭い殺気は色褪(あ)せる事なく。



「Shut up!死ネ。」



ギロリと睨んだ光を映さぬ眼でソルは容赦なく、ドガりとチップの腹へ体重を込め片足を落とした。

内に残った欲望とほんの少しの血液。
ひと呼吸だけの呻き。


横腹にも入れた蹴りで、軽く吹き飛び、岩に無造作に打ちつけられた。



動かぬ体のまま、それでもキツイ瞳だけが閃光を宿し、ソルを睨み付ける。



「犯されネーように強くなって来い。」

ニヤリと笑い、声にならない、毒を吐いた。


様だった・・・



既に瞼を落としたチップにせめてもの情けでパサリと引き裂いた衣を白い、白かった肌に覆い被せた。





自分はウサギ。
命を弄ばれた哀れな弱者。


戦う事が全てになってきた俺へ。
ここにいる訳を。


その肉で。
痛みで。
熱さで。
その瞳で。

「幸福」を。



教えろ。

俺がココにいる証を。




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某所からお持ち帰り、書き直しとかの第2段。ソルが兎。弄んでくれたのはあの男。ギア改造云々と渡り合える生身チプって凄いよな(負てるケド)と、他の方のソルチプ見て、少しアレなの書こう!!と思ったらなぜか鬼畜になったという…?自分でも脳構造に疑問を持った。イヤイヤ言ってる間はイジメルけど本気泣かれされると弱いが、泣かないならトコトン鬼畜なのだろうか…?謎。