リスク
メリット:段々、強くなれてる気がする。
デメリット:勝っても負けても抱かれる。
「孕まないな。」
「ああ!?」
汗と精を落とすチップは、明かに、機嫌が悪そうな声と共に、ソルを睨みつけた。
あと少しで勝てると思ったのに。
ダブルカウンターで“力”負けした、それが腹立たしい。
その後はいつもと同じ。
引き起こされて、服をはがれ、抱かれて、気を失っている間に水辺に連れられて。
タバコを吸いながらずっと自分を凝視していて、やっと発した声がそれだ。
どうやら、この真っ平らな腹を見ていたらしい。
「孕むワケねーだろ、馬鹿か?」
それが目的で、毎回毎回ヤってたのか、この男は。
ソルは片手を上げて何か言いたげだったが、そのまま止め、タバコを咥えなおす。
知っている。
手を上げてひらりと掌を返す仕種は、こっち方の主張がおかしい時によくやる。
多分、機嫌が悪いのを分かって、論じても意味がないと止めたのだろう。
「物理的に出来ねぇよ。考えろよ。」
だから代わりに、その仕種をやり返した。
ただの言い返しでなく、確信がある言い方。
何かと手合わせしては、打ち倒し、負けたとしても、すぐとっ捕まえて、ご褒美だと抱く。
半年ぐらい前は、抵抗を力任せに押え付けて手足を体中まで、痣だらけにさせていた。
最近は振り解けないのを分かって、口煩くはあるが、大分大人しく抱かれている。
避妊などしていない。
孕ますつもりで週1程度は確実に注いでやった。
数打てば当たりも・・・
数・・・
「・・・・・・・・・お前、まだなのか?」
頭がいい男は、タバコを一吸いする間で、即答えを導き出したらしい。
「ンーな訳あるか。どうオマケしたって、俺ハタチ超えてんだぞ?今ないだけだ。」
そう。
半年の間、一度も月水に当たった事はない。
女の生態を理解してなかった訳じゃなかったが、対戦の時がチップに会う唯一の機会で、その度、捕まえて手を出すのが
当たり前になっていて、盲目していた。
「何だ?」
主語がないとか、そんなレベルでない物言いを、最近理解できる自分自身に、チップはため息をついた。
「師匠が言うには、細すぎるんだってさ。ガキ欲しかったら、『忍の道』外れろとも言ってた。」
水から上がり、肌の雫を拭うチップの体は、確かに細い。
が、それは筋肉により締まっているだけ。その証拠に体重は見た目よりか重い。
『脂肪』分が足りないのだ。
動物は食料不足などで、極端にエネルギー源が確保出来ない場合、生殖機能を一時に止める事例がある。
それは、貧弱な命が厳しい環境下で行き抜ける『率』が低いから。
ならば、子を産むよりも、母体の生命維持を優先させ、その状況を抜けるまで待ち耐える方が、「種」を残せる。
進化論は確率論の上に成り立っている。
その『率』を高める為の判断基準が『脂肪』。
生物はエネルギーを『脂肪』として蓄積する。
蓄積できるほどならば、健康な母体、次世代も生存できる食糧事情・環境であるという事。
『忍の道』というのも、筋が通っている。
常に速さを求め、動き続ける体は、大量のエネルギーを消費する。
それが、摂取エネルギー量よりもはるかに多いか、筋肉として肉体構成への使い切った場合、体に蓄積出来るハズもない。
本人は分かっていないようだが、コイツの「師匠」は戦士としてだけではなく、「育て親」として、ちゃんと女としての生き方も説いていたらしい。
「飯の世話まで要るのか・・・」
「あン?」
身なりを整え、濡れた髪を手櫛で跳ね上げさせながら、本日聞いた一番長いセリフに疑問する。
「飯食いに行くぞ、来い。」
「どういう風の吹き回しだよ?」
いつもなら、それで言葉も交わさず終わる事も殆どなのに。
「お前を太らせてから喰う。」
と、言いたかったが、言えば確実に付いて来ないので、黙って街の方へ歩き出す。
少し戸惑っていた様だったが、足音が付いてくる。
孕みゃあ、ちょっとは大人しく腕の中にいると思ったが、先は長いようだ。
メリット:抱ける。
デメリット:気がかり。
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一応デキ婚は嫌悪の対象。健康な女はな普(略)女体化ではこの論を使用してます。既成事実を狙ってるがそうは問(略)
すぐ水場連れてくるのは、剛毅(ゴウキ)なのを無理矢理に的したから「穢れ」落とし、「清め」とかの意味。でも、本人が思ってるだけで結構殊勝だから、お相手嬢、遅い恋心バレないように必死だったり…とかで、いまひとつ・・・(謎)ちょっと寝てくる・・・