裏切り




「ああああああ!!」
部屋に大きく声が響く。
ソルを引き剥がそうとしたチップの手は、簡単に押さえつけられる。
いつもは隠れた鋭い八重歯がもう一つ強く、首筋に刺さる。


斬られる傷は瞬時に熱と痺れになり、いくらでも我慢できた。
しかし、肉を喰い千切られる痛みは、一つ一つの細胞が潰れる毎に激痛をもたらせる。


ぱちりと皮膚が裂け、血がやっと噴出す。
赤く染まった口元が大きく歪み、今度はその血を舐め取る。

舌が触れられる毎、痛みは脳に直接送られ、自然と涙を落とさせる。
「あ・・・・ア・・・はぁ・・・・・・」
同時に、下半身を弄られる。



激しさと甘さ、涙と嬌声、痛みと快楽。白い首筋に赤い血。
相反するそれが良いのだと。



自分だけが何度も絶頂にされ続けたこの半日。
やっと放たれた熱さは内で収まり切らず、肌を伝う。





チップの荒い呼吸が治まった頃、ソルはまだその体を手放さず、血が玉となるまで待ち、垂れ落ちるギリギリに舌先を伸ばし舐め取ると、次の雫を楽しげに待つ。
こんなに疲れきり、全てが体液で濡れた自分とは裏腹に、不敵な微笑で未だ犯し続ける男。

酷い裏切り。
いいや、裏切ってなどいない。
優しさに安心して、忘れていたのだ。
自分は獲物で、捕食者の手の内にある事を。

分かっていたはずなのに、大きく吸い込んだ息は自然と涙声を絡ませた。
それに気付き、首元から頭を上げたソルの顔には、血糊がついている。

顔を背けるが、頬を強く引かれ無理矢理口付けられる。
次どうされるのか、恐れに硬直したが、よく知る自分の血の味のキスは、段々と甘い声を上げさせた。




人形のように大事に抱いたチップの、傷とは反対側の首筋を触る。
いつもはベルト風のチョーカーで隠されているが、色素が浮くだけになった傷跡を愛しげに見つめる。
「一度されりゃあ、警戒すると思ったんだがな。」
前の時は壁に血が飛ぶほど酷くされた。
確かにそのすぐ後は警戒していたが、会う毎に謝り、傷を気遣い、優しく抱く様になったから・・・
「普通、ヤられながら喰われる心配しねぇだろ・・・」




そう。
所有の証などではなく、本気で喰いたかった。

普通なら半日ヤれば、少しは足腰に来るものだが、それなりに鍛えたコイツは、身なりを整え、部屋を出る頃には
何の名残もなく隙ない動きになると思うと、その感情が高まった。
離れて行かぬ様、その全てが欲しかった。


それでも、それを理解し、覚悟にひそかに泣かれれば、愛しさが勝る。




ゆっくり、軽い体をベッドに預けさせると、チップは安堵のため息をついた。

少しだけ苛立ちと悪性。

やっと体内から、異質がなくなると思ったのに、再び奥を突かれ大きく声を出す。
怯えたような驚きで顔を見たチップに、牙を見せ野獣の微笑をする。

自分が終わると思ったから終わらせない。
相反する事。

「・・・・もう・・・・いい加減・・・・・・飽き・・・」
早くなっていく動きに、再び芯が快感を運ぶ。
「侘びだ。今度は気持ちイイだけでイかせてやる。」
抗議はただの喘ぎになっていった。



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ソル=凶悪というイメージがヤッパリあるらしい。ソルの声優さん(AC+のストーリー)がヘルシングのアーカードもやってたと知ったので、吸血行動させようと思ったのだが、書いてる途中で本物の吸血鬼いる事を思い出した(遅い)
ちゃんと書いてないので、女体でもいけると言うどうでもいい仕掛け小説。