純理





まるで対極。

陰と陽。


磁器のように造られた程に見える白い肌.
芯から搾り出されたような黒褐色の肌


絹糸のような透ける銀髪
決して光を跳ね返さない重鎮な黒髪


ほっそりとした指先は優雅に動く。
子供の腕の太さはある指はそれでも器用に動いた。


駆け抜ける脚は音もなく瞬だった。
巨体を支える脚はまさに大樹だった。


普通よりか強さはあるが戦士としては貧弱な腕。
待ち上げる事が出来ぬ物はない最強の豪腕。


すべてを射抜く眼差しは真紅。
大局を見つめる目はただ優しく。


麗しい姿の内にあるのは殺気。
畏怖の巨身に秘めしは博愛。



風と大地。


同じものが一つとない彼ら。
一緒になれるはずが無い。

それでも出会ってしまえば、風は大地を刻み模様を描こうと、大地は風にその身を削って砂となってまで付いていこうとする。

そんな二人。




刃は容赦なくその肉体へ下ろされた。
鋼鉄にも等しい筋肉は皮を切り裂かれつつ、跳ね除けた。

後ろに跳ね退くと次の一手で前進し、俊足の蹴りが関節を逆に折らんばかりに鋭く突いた。
それを常人でない反応で横に払い退けると、そのまま細い足を握りこんだ。

瞬間に体を回転させると、肘に反対の脚を掛け、指を逆さに折る。
独特な関節技の構えを目が確認するや否や、より速く、その背へ膝蹴りを入れる。

掴んだ腕筋肉の緊張から脚が振り上げられている事を知ると一呼吸込めてもう半回転体を回して、肘関節をキメた脚をそのまま伸ばし喉を狙う。
迫ってきた撃を腕を下げる事で避ける。支点にされた指ぐらい軽い犠牲だ。

床に落とされる前に、肘内に踵を落とし、少し緩んだ平から脚を引き抜くと、そのまま後ろへと跳ね、距離を離す。
上体を前に傾ける体重移動で肩からタックルをかます。

一歩ついた足で前へと跳ねた。刃は眼を完全に捉えた。
瞬間に出した掌(しょう)が大きく胸を打ちのめした。

後ろへ飛ばされたチップは瞬間的に跳ね戻り、構えを取るが、ポチョムキンは仕掛けはしない。



「それ」が決着の合図。



「本日の格闘講義はこれで終了する」
エコーの掛かった声が、口を開けたままの兵士達に投げつけられた。
やっと瞬き出来た兵士達は停止した脳のまま、感嘆を無表情のまま拍手で答える。

チップはやっと構えを解き、平に拳を添えて深々と礼をした。

二歩で近付いたポチョムキンも同じく頭を下げた。


「つーか、テメー、脚持った時、そのまんま叩き付けれただろ!?」
「最初の一撃にフェイントを加えなかった理由を教えていただこうか?」

そして兵士達は知っている。
自分達が魂さえ持って行かれそうだった「死合(しあい)」は彼らにとっては余興に過ぎないという事を。

講義を見るのは実戦に活かす訳ではない。
瞬時の判断力と脳の切返し、動揺しないように、洞察力、動体視力。戦士・闘士としての心構えの訓練。



そして最も重要なのは『信頼力』。


素晴らしい戦闘力を持つ彼らは、きっと『自分達を守ってくれる』。
彼らだけを信じる訳ではない。

『現地まで送り届けれる技術』『支援できる行動』『作戦までの準備』
自分達が出来る事。自分自身を認め、任務を推進する自分自身を『信じる力』。

そして、彼らが崇め、守るべき最高上司「大統領」への『絶対信頼力』
月に一度、戯れで大統領も講義をするが、彼らが揃ってかかっても、太刀打ちできない強さは、それに当たる。




講義が終わった後、彼らは「本気」の「死合」を始める。
いいや、いつもの『訓練』を始める。

講義の非でないそれに追いつける者はなかった。






就業のサイレンが鳴ったのが合図。
鋭い剣技と拳が唸る。


一足先に任務を終えれた者、最後の片付けの足を止めた者、休暇中の者。
数人のギャラリーをギラギラとした視線で一瞥すると、講義の後と同じ様に礼をする。

遠く離れていたのに、よく分からぬ技で瞬時にポチョムキンに寄り添うとチップも頭を下げた。



本日の敗者に大きな手が攻撃の為意外で、優しくその背を触れる。
二人は始めては笑顔を向けた。


大地と風。
消して離れる事がない。

そんな二人。



心惹かれあうのは必然で・・・

それはまた、別のお話。





#####
AC+の仮面ライダーED後。修行好きなチップと任務に忠実なポチョは、四六時中手合わせしてたらいいなと。それでもちゃんとそれは大統領館みたいな真ん前でやってて、不審者は即排除。対になるお話は女体化の方にありますが、まあ、察すれ?